鶴居村の「美味しい」を提供する料理人

地域の人たちと連携し、豊かで美味しい「食」を届けたい。

この道に入るまでは包丁すら握ったことがなかったという服部さん。料理の道に進もうと考えたのは高校3年生のときだったという。「大学に進学するより手に職を…と考えたとき、レストランを経営する母の姿を思い出しました」と当時の心境を語る。調理師専門学校に進み、卒業後は東京の老舗レストランで働き始めた。

転機となったのは結婚。家庭を持つなら都会より田舎がいいと思い、真っ先に浮かんだのがふるさと鶴居の風景だったという。「自分が生まれ育った丘の風景、朝日が昇り、夕日が落ちていく様子を日々眺められるのは、とても贅沢なこと。自分がどれほど豊かな環境にいたか改めて気づかされました」と語る。自然に囲まれのびのび暮らしていた自分の子ども時代を思い、我が子にもそんな時間を過ごさせてあげたいと帰郷を決めたそうです。

料理人の立場からも美味しい食材が豊富にある鶴居村には魅力を感じるそうで、できるだけ地元の食材を使うよう心がけているとのこと。「鶴居にはいい食材が多いので、その魅力を再確認してもらえるようメニューを工夫しています。もともと「ハートンツリー」は〈酪農家の応援団〉としてやってきました。その意志を受け継ぎ、地域で頑張っている方々と協力しています。たとえば「みらくる工房」さんからジビエの鹿肉を仕入れてステーキやローストにしたり、酪農家の奥さんたちが作ったビーツやバジルなどの野菜を、ピザやパスタに使っています」。

そんな服部さんが大切にしているのは、捨てるものを少なくすること。廃棄は極力少なく、食べられるところはできるだけ活用する。たとえば解体した鹿の骨を出汁に使ったり、チーズを作る際に出るホエイでパンやキャラメルを作ったりと、できるだけ食材が無駄にならないよう地球に優しい商品作りを心がけているとのこと。

「鶴居村は優しい人が多くて、商品開発やメニュー作りにも喜んで相談に乗ってくれます。そうやって地域の人たちと一緒に考えていくのが楽しいですね」と語る服部さん。「これ使って見たら?」「こんなメニューはどう?」など周囲の意見が商品化につながることもあるそうです。

帰郷して改めて鶴居村の良さに気づいたとも語る。「村の制度が充実していることももちろんですが、シンプルに暮らしやすい、綺麗な村だなと思います。メインストリートはきちんと整備されているし、村全体に隠れ家的な店が点々とある。自分は丘の上で暮らしているので、景色自体が贅沢だと感じますね。農家さんから野菜をもらうなど交流も多い。そんな付き合いができるのもこの村ならではだと思います。とにかく人の優しさを感じられる村ですね」。

今後の展望をうかがうと「今と変わらず地域の方たちとコミュニケーションを深め、いいかたちで連携しながら、季節ごとの美味しさを提供できたらと思っています。そしてこのレストランを、今以上に誰もが楽しく過ごせる憩いの場にしていきたいですね」と語ってくれました。